鹿児島県の薩摩半島に連なる坊津、久志、枕崎、秋目、野間池など「南薩エリア」は、毎年春に60~70㎝のデカバンが出る海域として知られている。
しかし、そうはいっても簡単にモノにできるはずもなく、そこには釣れるタイミングや潮、テクニックなどの要素が必要となってくる。
そこで地元の名手はどのような戦術を取っているのか、長年南薩に通うエキスパートが春のイシダイ攻略法を明かしてくれた。
 



 
狙いはズバリ!3月の彼岸!?

私のホームグランドである南薩の久志では、例年2月上旬頃からポツポツと春石鯛の釣果情報が聞かれるようになり、3月に入った途端、それまで多かった上物釣り師の姿がめっきり少なくなり、港は底物釣り師一色で賑わうようになります。車のナンバーも1~2月は地元鹿児島がほとんどでしたが、3月になると福岡や北九州、熊本、佐賀、長崎、はては関東や関西からも遠征して来られる方を見受けます。
それにともなって連日のようにイシダイの姿が見られるようになり、60㎝から70㎝クラスのデカバンの姿もチラホラ。さらにはクチジロらしきアタリに仕掛けを飛ばされた、竿を折られた、あるいはピトンを曲げられた・・・などなど、石鯛釣り師なら居てもたってもいられない威勢のいい話が飛び込んできます。

南薩には魅力的な磯がたくさんある。船長も親切でアドバイスも的確

ここで私の長年の経験とデータから、春磯でもっとも期待できる時期をこっそりお教えしましょう。それは彼岸の入りの3月21日です。実際、この日には1日に何枚もの60オーバーが上がった年もあり、もっともアツい底物DAYと常連の間では言わずと知れた定説となっています。
 ただし、春のシーズンに一番気を悩ますのが水温の変動で、北西風の影響により1日にして水温が2℃下がったとか、逆に水温が上がってまったくアタリもないなど、自然はきまぐれであるということをお忘れなく。とくに「下げ潮に変わった途端、エサ取りもいなくなった・・・」という言葉は春のシーズン中によく耳にします。
今年は下げ潮で温かい潮が入ってきたり、秋のシーズン以降あまり水温の低下がなかったことの影響もあるのか、すでに坊津や開聞の地磯では下げ潮の時間帯に60オーバーが上がったという情報も飛び交っていますので、すでにシーズンの走りだと判断できます。
南薩エリアのデカバンラッシュは大体5月のゴールデンウィーク過ぎまで続き、メスのデカバンが出だす5月中旬で春のシーズンが終幕するのが毎年のパターンとなっています。


宙釣りよりテンビンが有利!

夢の60オーバーを獲るには信頼できるタックルを組むことも距離を縮める上で大切になってきます。掛けたは良いが、いとも簡単に仕掛けごと飛ばされないようにするには、自分なりの拘りも必要だとは思いますが、周りの情報も取り入れた仕掛けは必須となります。
とくに春の石鯛はノッコミの最盛期なので、産卵前の食いが荒いときもあれば、マタニティーブルーなのか、極端な食い渋りをみせたりします。そこがおもしろくも歯がゆいところですが。
それはともかく、さまざまな状況を攻略し、価値ある1枚を手中にするため私が使っているタックルを紹介したいと思います。

まず竿は「カリプソ石鯛500」。この竿は細かいアタリを走りに繋げ、走ってからは胴にしっかりと乗り、パワーを竿全体でうまく分散できるブランクスと独自のガイド設定により、魚に違和感を与えず、釣り人に負担が少ない高バランスなロッドとなっています。はじめて手にしたときは華奢に感じされ、本当に大丈夫か?と少し心配になりましたが、いざ使うと抜群に使いやすく、後発の「天空の剣」とともに、とても信頼できる竿といえます。
道糸は「HERO20号」。以前はナイロンの24号を使用していたが、HEROの使用で自己最高の66㎝や60オーバーも数釣っていることから、2ランク下の糸でも楽に主導権を握ることができる信頼の道糸と断言できます。
 
次に仕掛けですが、南薩エリアでは昔から宙釣り仕掛けが使われ、今も多くの方に利用されているようですが、私は数年前よりMr.ishidai の「爆釣ゴムテンビン」を愛用しています。その理由は、捨て糸の長さを状況に合わせて使い分けることで走りに繋げてくれるから。春は磯のカベを釣ることが多くなるため捨て糸は5㎝から10㎝ほどとし、手持ちで小さなアタリを逃さないように気をつけています。
オモリはカベ狙いならできるだけ軽い10号前後がよく、エサ取りが少ないときはサミングしてゆっくり仕掛けを落としておきます。底付近でしかアタリがないときはオモリを重くして、捨て糸も80㎝くらいとることもあります。捨て糸は底の形状に合わせて糸の長さを調整し、間違っても海藻や割れ目にエサが入り込んでアタリが出ない・・・ということのないように。またテンビン仕掛けは根掛かりのリスクも軽減でき、しっかりエサをアピールできる効果もあるので、真空オモリを使った宙釣り仕掛けよりも格段にアタリが取れます。
 

私が絶対的な信頼を寄せる爆釣ゴムテンビン新しく白も加わった

朝まずめは浅いタナに潜んでいる!

タックルを組み終わって、いざ実釣に入りますが、その前にぜひ知っておいてほしいことがあります。それはこの時期のデカバンは海面近くにいることが多いということです。毎年のように60オーバーを釣る地元勢はこの事実を理解していて、朝まずめは軽いオモリで足元に仕掛けを入れます。狙うタナは大体5~8mくらいの超浅場。当然、竿は手持ちで構え、ピトンを打ち込む音などはNG。朝まずめの1~2時間はとにかく浅場を手持ちで攻め、置き竿にしたい場合は朝まずめが過ぎてからが無難といえます。

また、音は立てないにしてもポイントの先端に立ち海中を覗き込むこともタブー。ほかにマキエをジャブジャブ入れたり、磯靴でガシャガシャ歩き回るのも避けてください。仕掛けの入れるときもドボンと音がしないようにあくまでも「そ~っ」と入れてください。
 
浅ダナのデカバン狙いでもうひとつ、よく聞くことがあります。それは13号や14号の小バリが好まれるということです。イシダイ釣りではハリが小さくなるほどスッポ抜けの原因になるといわれていますが、これを防ぐにはアタリがあっても通常の釣りよりも、送って送って送って、どうかするとリールをフリーにして走らせ、ハリが完全に喉の奥まで飲み込まれてから合わせる、という釣法です。私自身は小バリはどうしても不安なので春は「M-2本石」の15号を主に、秋はM-2の16号を主に選択しています。なお、小バリでも大バリでも、取り込みには万が一を考えてタモで掬うことをおすすめします。とくに相手が大きい場合、最後の取り込みに失敗した・・・という話は数多く、タモさえあればと悔やんでも後の祭り。確実に釣り上げる方法を最優先したいものです。
 

貫通力抜群のM-2本石。小バリを使わなくても15号で十分!

エサは赤貝とガンガゼを使い分ける

南薩エリアで使用するエサについてですが、周年ガゼオンリーでも釣れないことはありません。常連さんの中には「赤貝なんて使ったことない」って人も何人もおられるくらいです。またクソガニ(アシハラガニ)だけを使う人もいて、自分が信頼できるエサであれば種類は何でもいいと思います。ただ、銀ワサを獲りたいのなら赤貝などの貝類が断然いいようです。貝類とあえて広い範囲で書いたのは、近年では鹿児島でもサザエやジンガサを使う人が増え、これらのエサでも釣果が出るようになってきたからです。ガンガゼは縞模様が浮かぶメスの釣果が目立ちます。

赤貝などの貝類ではオス、ガンガゼではメスが釣れる確率が高いという
さて私の場合ですが、春の時期はマキエも兼ねて赤貝10㎏を基準に準備します。できるだけ釣行の前日に入手し、5㎏をムキミに、残りを荒割りにして持参します。またエサ取りが多いときのためにあらかじめ作って冷凍しておいた塩締めも必ず1~2パック持っていくようにしています。
塩締めは磯の上で作ることもあるので、磯バッグの片隅に塩を1kgほど入れておくようにしています。
ハリへの装着は5~7個、エサ取りが少ないときはさらに多く付けて目立つように。反対にエサがすぐなくなってしまう場合は塩締めをハリに3~5個くらい付け、ワイヤーの部分に荒割りを3~5個数珠掛けにします。肝心なのは、いま海中にあるハリに何個付けているか把握しておくことで、アタリに応じて「あとハリには何個残っている」「もうなくなった」と判断することが大切になってきます。

ガンガゼは小粒の方が食い込みが良く、ヒット率も上がるようです。年に何回か五島や平戸方面に遠征すると、ガンガゼは小粒より直径6~7㎝の中粒が好まれ、地域による大きさの差を感じます。もちろん“郷に入れば郷に従え”と、私も南薩では小粒、それ以外では中粒を使うようにしています。
南薩エリアで小粒のガンガゼが好まれるのは、殻が柔らかく、口に入れても違和感を与えないので食い込みがいい、という理由があるようです。
シラガウニ(白ウニ)も以前は頻繁に使われていましたが、ガンガゼが使われるようになってからは極端に少なくなり、草垣や硫黄島、屋久島などの離島では今も主流ですが、九州本土ではあまり使われなくなりました。

私のデカバン必釣法

では、デカバンを狙う上で注意した方が良いと思われることを最後に少し...。
1)磯靴はフェルトスパイクなどのガチャガチャ音の立たないものを履き、必要以上に歩き回らないこと。
2)釣りはじめ1時間くらいはピトンを打ち込んだりしないこと。潜ってピトンを打つ時の音を水中で聞いたことがありますか?鼓膜が破れるかと思いますよ。魚も同じだと思います。せっかく寄っている魚を釣る前に散らしてしまうことになりかねません。
3)マキエは潮の入り具合等を確認しながら打ち込むこと。明るくなってから、仕掛け投入ごとに少しずつ撒きこむのが◎。上物釣りの感覚で。
4)船に持ち込む荷物はコンパクトに。竿ケース、磯バッグ、バッカンの3個に集約すれば一度の瀬付けで渡すことができるので効率的に瀬渡しができます。荷物が多いと足場が小さいポイントに上がれないというデメリットも生まれます。
5)自分で持ち込んだゴミは最後まで責任を持って持ち帰ること! 岩の割れ目にビニールなどを押し込んだり、磯の上で焼却することは厳禁です。
7)同じ釣り場に通うこと。今日はあっち、来週はこっちと釣り場を変えるのは自由ですが、できればポイントや潮を覚えるまでは同じところに通った方がいいと思います。とくにデカバン狙いは「今日の天気と潮ならココ!」とポイントを絞れることが可能となるため、それを会得するまで通って身に付けたいものです。


デカバンが多い南薩は油断禁物。いつでも対応できるタックルと仕掛けで臨みたい

渡船リスト 
・久志エリア
 妙丸 0993-68-0717
      久木元 昭弥船長090-1161-3819
    渡船料 4,000円
出船時間は時季によって変わります(必ず確認を!)
      回収の時間は基本14時(10時の見回り時に船長が教えてくれます)
ガゼの予約可能30個3000円、40個3000円、50個4000円
      予約は前日までに要確認
      
・坊エリア
 侍丸
      田上 陽一郎船長080-6411-6907
      渡船料 4,000円
      出船時間は時季によって変わります(必ず確認を!)
      回収時間は乗船時に確認してください。

  ・枕崎エリア
 海星丸
      星田 一明船長090-9595-2005
      出船時間は時季によって変わります。(必ず確認を!)
      1番船~14時まで 4,000円
      1番船~17時まで 5,000円

※ハイシーズンにつき、全渡船、事前に予約状況を確認することをおススメします
上記のデータは2017年1月末現在のものです。